同じカテゴリで戦う越境ECの2社。経営者同士は面識がありません。それでも3か月間、価格はほぼ完全に連動していました。片方が上げれば数時間で相手も上げる、片方が値下げしなければ相手も譲らない。
打ち合わせもチャットグループもなし。共通していたのは、同じSaaSベンダーが提供する「AI価格最適化ツール」を、両社が「マージン最大化・競合追随」の設定で使っていたことだけ。
これは独占禁止法上の「共謀」にあたるのでしょうか。
伝統的な独禁法は「合意」を出発点にしてきました。カルテル立証には、人と人との「意思の連絡」が必要でした。ところがアルゴリズム価格設定は、この前提を静かに崩します。誰も話していない、しかし市場結果は同じ——価格の平行動、消費者利益の毀損。
中国は動いています。2022年改正の独占禁止法は、「データ・アルゴリズム・技術・資本優位・プラットフォームルール」を用いた行為を明確に規制対象に含めました。日本の公取委もアルゴリズム協調について指針を打ち出しています。
日系企業が中国越境ECやマーケットプレイスでAI価格ツールを使う場合、実務上のポイントは3つ:
導入前に独禁法の観点からレビューする。個人情報だけではなく、参照する競合データと出力の並行性を検討する。
人によるレビュー記録を残す。最終価格をAIが提案しても、人が判断したという証跡を残す。
SaaSベンダーに確認する。同じモデルを同業他社にも売っているのか、データは本当に分離されているのか。契約に書き込む。
アルゴリズムは罰金を払いません。制裁は売上高ベースで会社に降ります。
複数法域でAI価格設定を展開されているのであれば、当局からの一報が来る前にご相談ください。
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呉展鵾弁護士 · 渉外弁護士
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